念願の Sサイズが着られるようになった。
ショップで試着して、ファスナーがスッと上がった時、 思わず声が出そうになった。
「やった、入った!」
でも、鏡の前で立ち尽くした。
確かに着られる。
でも、なんか違う。
体のラインがはっきり出すぎて、 なんだか落ち着かない。
店員さんは言った。
「お客様にぴったりですよ!」
でも、私は不安だった。
「これ、外で着て歩けるかな…」
結局その服は買わなかった。
家に帰って、クローゼットを開けた。
痩せたら着ようと思って取っておいた服たち。
試着してみると、確かに入る。
でも、しっくりこない。
「痩せたら絶対これ着るんだ」と思っていた服が、 今の私には似合わない気がした。
友達のF子に相談してみた。
「私もそれあった!」とF子は笑った。
「痩せたら着たい服って、理想の自分が着る服なんだよね」
「でも実際痩せても、自分は自分のままだから」
その言葉に、ハッとした。
私は痩せたら別人になれると思っていた。
モデルみたいな服が似合う、違う自分になれると。
でも、痩せても私は私だった。
好きな色も、落ち着く服のタイプも、変わらなかった。
ある日、いつも行く服屋さんで、 気になるワンピースを見つけた。
前の私なら「これはMサイズだから」と諦めてた服。
試しに着てみると、ちょうど良く着られた。
そして、鏡に映った自分を見て思った。
「これ、いいかも」
Sサイズじゃない。
でも、私らしい。 体型を隠すわけでもなく、無理に出すわけでもなく、 ちょうどいい。
店員さんに聞いてみた。
「これ、私に似合いますか?」
「とてもお似合いですよ。自然体で素敵です」
その言葉が嬉しかった。
ダイエットの目標は「Sサイズを着ること」だった。
でも本当に欲しかったのは、 「自分に似合う服を、自信を持って着られること」だったんだ。
サイズじゃなくて、自分らしさ。
痩せることがゴールじゃなくて、 自分を好きになることがゴールだったんだと、 ようやく気づいた。
今は、サイズタグを気にするより、 鏡の中の自分が笑っているかどうかを気にするようにしている。
それが、私にとっての本当の「似合う服」だから。
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